―― 日本のバブルとの違い/金利との関係/直近の価格と在庫
はじめに
最近「アメリカの不動産ってバブルじゃないの?」という声をよく聞きます。
ここでは難しい専門用語はなるべく使わずに、次の3点だけに絞って整理します。
- 日本のバブル崩壊と何が違うのか
- 金利が上がると価格はどう動くのか
- 直近の価格と在庫はどんな状態か
1) 日本の“あのバブル”とアメリカ、何が違う?
結論
- 日本のバブル(1980年代末)は「貸しすぎ+全国一斉に値上がり→総崩れ」
- いまの米国は「審査が厳しい・地域差が大きい・在庫が足りなめ」で、同じ崩れ方になりにくい
もう少しだけ詳しく
- 日本(当時):銀行が土地を担保にどんどんお金を貸し、株と不動産が全国的に急騰。その後いっせいに失速して長い停滞へ。
- 米国(いま):2008年の反省で、住宅ローンは「返済できるか」を厳しく確認する仕組み(収入・負債のチェックなど)。無茶な貸出が主流ではない。
- 地域差:アメリカは都市ごとの動きが大きく違う(人口が増える都市・そうでない都市)。全国一律に“同じ温度”になりにくい。
- 在庫(売り物件):ここ数年は売り物件が少なめで、価格が“信用の暴走”だけで上がっているわけではない。
ポイント:
日本の「全国いっせいの上げ下げ」と、米国の「地域ごとに需給が違う」は構造がちがう。
2) 金利が上がると、価格はどう動く?
結論(かんたんに)
- 金利↑=毎月返済が重くなる=買える人が減る=価格の上昇は鈍る
- ただし在庫が少ないと、**下がりにくい(粘りやすい)**ことも多い
イメージで理解
- 金利は“住宅の月々払いの重さ”です。上がると需要は冷えます。
- でも**売り物件が少ない(在庫が薄い)**と、価格は急落しにくい。
- つまり、**金利(冷やす力)と在庫(支える力)**の綱引きで決まる、が今の米国の姿。
まとめ:
「金利が上がった=すぐバブル崩壊」ではありません。**金利×在庫×所得(雇用)**のセットで考えるのがコツ。
3) 直近の「価格・在庫」をざっくり把握
※ここは“雰囲気”だけつかめればOKです。数字は月でぶれます。
価格のざっくり感
- 主要な価格指数(ケース・シラー、FHFAなど)は横ばい〜緩やか上昇の範囲に収まる月が多い
- 「急騰」でも「急落」でもなく、持ち合い~小幅プラスのイメージ
在庫(バランスの目安)
- 在庫が3か月台だと売り手優位(品薄)
- 5〜6か月くらいで均衡
- 足元はだんだん均衡に近づく方向(=過熱が少し落ち着く)
いまは「上がり続ける」でも「崩れている」でもなく、均衡を探る途中という見方が自然です。
4) 不安を減らすために、ここだけ見ればOK
① エリアの人口と雇用
- 人が増える都市=底が硬い(賃貸も売買も需要が続きやすい)
- 全米平均だけでなく、都市ごとのデータを見るクセを
② 在庫のトレンド
- 在庫月数が4.5 → 5.0 → 5.5か月と増えるほど、価格は横ばい寄りを想定
- 逆に4か月台前半が続くなら、需給が再びタイトに
③ 金利に対する“手残り”の変化
- 金利が**±0.5%**動いたとき、**家賃収入から経費と返済を引いた手残り(キャッシュフロー)**がどう変わるかを先にシミュレーション
- 買ってから慌てないための“予行演習”です
5) よくある質問
Q. いま買うのは危険?
A. 「全国がバブルで崩れる前夜」という広範なサインは見えていません。**エリア別の需給(人口・雇用・在庫)**を見て、金利に対する手残りを計算できれば、極端な失敗は避けやすいです。
Q. 金利が下がるまで待つべき?
A. 金利が下がると需要が戻りやすい=価格が下がるとは限らない。待つ期間に下見と数字の準備(在庫・利回り・手残り計算)を進めるのが吉。
Q. 日本のバブル再来みたいに一斉に崩れない?
A. 米国は審査が厳しく地域差が大きいので、全国同時に同じ崩れ方をする可能性は低め。見方は**“全米平均”より“都市別”**が基本です。
6) 今日の結論
- 構造の違い:日本のバブル=貸しすぎ&全国一斉。米国はいま、審査が厳格で地域差・在庫の影響が大きい。
- 金利の影響:金利↑で上がりにくいが、在庫が薄いと下がりにくい。“均衡へ”の動き。
- 足元の肌感:価格は横ばい〜緩やか、在庫は均衡に近づき。広範な急落サインは見えにくい。
- 見るべきは3つ:人口・雇用/在庫トレンド/金利に対する手残り。この3点のセットで判断。


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