―― 「分散の必要性」をやさしく解説(通貨/地域/資産クラス/時間)
はじめに
日本に住み、日本円で給料をもらい、日本の銀行に預け、日本の資産だけを持つ——とても自然ですが、実は“すべてが同じ方向に動く”集中リスクでもあります。この記事では、国内一本足の何が危ないのか、家計にどう響くのか、そしてムリなく始める分散の手順をやさしく解説します。
1) 国内一本足の“見えない集中リスク”
家計の視点:収入・支出・資産が全部「円」
- 収入:円(日本の景気に直結)
- 貯金:円(円の価値そのものに依存)
- 投資:日本株・日本不動産に偏りがち
- 支出:輸入品・エネルギーは実はドルの影響を受ける
→ 円が弱くなる・国内成長が鈍ると、収入も資産も生活コストも同じ方向から影響を受けます。
マクロの視点:人口・財政・産業の偏り
- 人口減少・高齢化:内需が伸びにくい構造
- 財政・社会保障負担:税・保険料の上昇圧力
- 産業構造:グローバル成長の主役(IT/ヘルスケア/エネルギー新分野)は海外比重が高い
→ 国内だけに置くほど、世界の成長エンジンを取り込みにくくなります。
2) どんな形でダメージが来る?4つの典型シナリオ
① 円安シナリオ(通貨)
- 輸入品・光熱費・海外旅行が割高に
- 円預金の購買力が目減り
- ドル建て資産がクッションになる
② 景気停滞シナリオ(成長)
- 国内株や国内不動産の伸びが鈍い
- 給与の伸びも鈍化→投資原資が増えにくい
- 海外の成長市場に一部でも乗っていれば、全体の伸びを補える
③ 金利・物価シナリオ(インフレ)
- 物価上昇で現金の実質価値が低下
- **インフレに比較的強い資産(株・不動産)**を混ぜないと、貯金が削られる
④ 災害・制度変更シナリオ(予測不能)
- 自然災害・税制変更・規制強化など
- 地域・通貨・資産クラスを割ると、片方のショックを他方で緩和できる
3) 分散は“数を増やす”ことではない:4軸で考える
分散とは、違う動きをするものを混ぜること。以下の4軸で整理すると迷いません。
軸1:通貨(円/ドル)
- 生活費は円で必要 → 生活防衛資金は円
- 成長・保険の役割 → 一部をドル(米国株・外貨MMFなど)
軸2:地域(日本/海外)
- 国内:生活に近く把握しやすい
- 海外:世界の成長に乗る窓(米国など)
軸3:資産クラス(現金・債券・株・不動産)
- 現金:安全だがインフレに弱い
- 債券:価格安定だが金利に敏感
- 株:成長を取りに行ける
- 不動産:インフレ耐性・キャッシュフロー源
軸4:時間(積立・リバランス)
- 積立:購入タイミングのブレを平準化
- リバランス:増えた資産クラスを削り、減った側へ戻す=偏りの修正
4) 今日からできる分散の組み立て方(具体ステップ)
STEP0:生活防衛資金を円で確保
- 目安:生活費の6〜12か月分を円の普通預金などで
- ここは**手をつけない“守りの箱”**と割り切る
STEP1:インデックス積立で“世界の成長”に乗る
- 例:米国株 or 全世界株のインデックスを少額から毎月
- 個別株に自信がなくても、国や企業群の成長をまとめて取りに行ける
STEP2:通貨を割る(円:ドルの目安)
- 生活費・納税・近い出費は円で
- 中長期の成長取り込みはドル側へ
- 初心者の目安:円:ドル=7:3〜6:4(家計状況で調整)
STEP3:不動産は“現物 or REIT”で役割を分ける
- 現物:レバレッジ活用/キャッシュフロー源/手間は大
- REIT(不動産投信):少額・流動性あり/分配金でインフレ耐性の一部確保
- 国内偏重なら、海外REITを少し混ぜて地理分散
STEP4:年1回のリバランスで“偏り”を戻す
- 例:株が増えて配分が崩れた→一部を債券や現金へ戻す
- ルール化(誕生月に実施など)で感情に左右されない
5) ミニ事例:タイプ別のはじめ方(3パターン)
Aさん|社会人3年目・投資初挑戦
- 円の貯金:6か月分を確保
- 米国 or 全世界インデックスを毎月1〜3万円積立
- 外貨MMFで**ドルの“貯金箱”**を少額スタート
Bさん|30代・国内不動産1戸保有
- 既に国内偏重 → 米国株インデックスを月々積む
- 国内REIT比率が高いなら、海外REITを追加で地理分散
- 年1回、円:ドル配分を点検
Cさん|40代・教育費も控える
- 現金厚め+株はインデックス中心
- 不動産はREITで小さく(流動性を優先)
- 為替の“行ってこい”に備え、積立で平均化
6) よくある誤解Q&A
Q. 海外は怖い。日本だけで十分では?
A. 生活は日本でOK。ただし資産まで100%日本だと、円安・国内停滞の影響を丸かぶりします。少しでも通貨・地域を割るだけでリスクは下がります。
Q. 円安の今、ドルに変えるのは遅い?
A. 為替は読めません。積立・分割で平均化すれば“今が高い/安い”の悩みを減らせます。
Q. 分散するとリターンが下がる?
A. “一点狙いが当たれば”より控えめですが、外した時のダメージが小さい。家計の安定度はむしろ上がります。
Q. 何から買えばいい?
A. まずはインデックス積立(米国 or 全世界)。次に外貨MMFや海外REITで通貨・不動産の要素を足す、が定番です。
7) まとめ:国内一本足を“ほどく”だけで守りと伸びが両立
- 国内一本足は、通貨・地域・資産の同方向リスクを抱えます。
- 分散は違う動きを混ぜること。円/ドル、国内/海外、現金・債券・株・不動産、時間の4軸で整えるとブレません。
- スタートは円の防衛資金→インデックス積立→通貨分散→不動産の役割追加→年1回のリバランス。
- “大きく当てる”より、倒れない家計を作ることが最優先。分散はその一番確実な方法です。


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